相続や事業承継では、
「父親が出したお金なのだから父親の財産だ」
という考え方がされることがあります。
しかし現実には、
家業を支えてきた子に株式を持たせる意思があったのか、
実際にどのように会社が運営されてきたのかによって、
結論が変わることがあります。
本稿では、家業を法人化した際の非上場株式をめぐる裁判例を素材に、形式と実質の問題について考えてみたいと思います。
名義だけでは決まらないことがあります
家業を法人化した会社では、設立当時の経緯が数十年前であることも少なくありません。
当時の関係者が亡くなっていたり、資料が十分に残っていなかったりすることもあります。
そのため、
「誰が本当の株主なのか」
が後になって争われることがあります。
私が担当した事案でも、会社設立時の株式払込金は父親が負担していました。
形式だけを見ると、
父親が出資者であり、子どもたちは単なる名義株主にすぎないようにも見えます。
しかし裁判所は、その一点だけで結論を出しませんでした。
長男は高校卒業後から家業に従事し、父親を支えながら事業の発展に貢献していました。
また、長女も勤務先を退職して家業に加わっていました。
こうした経緯を踏まえ、裁判所は父親が単に名義を借りたのではなく、長男・長女に実質的な株主として株式を持たせる意思を有していたと認定しました。
そして、父親は子どもたちに代わって株式払込義務を履行したものと評価し、長男・長女の株主権を認めました。
この裁判例の特徴は、
「払込金を誰が出したのか」
という形式だけではなく、
「当時どのような意思があったのか」
「家業にどのように関与していたのか」
という実態を重視している点にあります。
非上場会社の株式は、上場株式とは異なり、家族関係や事業承継の経緯と深く結びついています。
そのため、
名義だけ、
あるいは資金負担だけで、
直ちに結論が決まるとは限りません。
特に経営者の相続では、
非上場株式が相続財産の中心となることも少なくありません。
会社設立当時の経緯や親族間の認識が曖昧なままになっていると、
相続開始後に大きな紛争へ発展することがあります。
事業承継では、
株式を誰に承継させるのかだけではなく、
なぜその人に承継させるのか、
どのような意思でそのような形を採ったのかを整理しておくことも重要です。
相続や事業承継では、
「名義はこうなっている」
「お金は誰が出した」
という形式だけでは解決できない問題が少なくありません。
特に非上場株式については、
設立当時の経緯、
家族の関与状況、
経営への貢献、
当事者の意思など、
さまざまな事情を総合的に検討する必要があります。
裁判では、裁判所が理解しやすい形で全体を構成できるかも重要になることがあります。
ここでご紹介いたした事案については、こちらをどうぞ。
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